某所より



「標準解答時間:50分 目標解答時間:40分」


炭素の新しい同素体として有名なC60フラーレン(以下、単にフラーレンと記す)は、以下の図のようなサッカーボール型の分子であり、その結晶は分子性結晶である。フラーレンの結晶構造は、面心立方格子であることが知られている。ただし、「サッカーボール型」とは、正二十面体の各頂点の周囲を、一辺の長さの1/3ずつ切り落とした、接頭二十面体という図形である。


(図省略)


炭素原子の原子半径をr[nm]、アボガドロ数をN[/mol]、炭素の原子量をMとして、以下の問に答えよ。ただし、分数や根号を小数に直す必要はない。


ア、フラーレン分子には、5角形の面と6角形の面がある。それぞれの面はいくつずつ存在するか答えよ。
イ、フラーレン分子には、何本の共有結合が存在するか答えよ。ただし、隣接する各炭素原子間の共有結合を1本と数えるものとする。
ウ、フラーレン分子の体積は何nm^3か。ただし、フラーレン分子の体積とは、サッカーボール型の骨格で囲まれた多面体の内側の部分の体積を指すものとする。また、フラーレン分子において、各炭素原子は最も近い炭素原子と接しているものとする。
エ、フラーレン分子中の各炭素原子に適当に番号を振り、C(1)、C(2)、・・・、C(60)とする。C(i)の中心とC(j)の中心との距離をd(i,j)と表すことにする。i,jをそれぞれ1から60まで変化させたときの、d(i,j)の最大値D[nm]を求めよ。
オ、フラーレンには、工業的な応用も数多く見い出されている。フラーレン分子の内側に金属イオンを内包させた「金属内包フラーレン」はその1つである。フラーレン分子には、どのような大きさの金属イオンまでが内包できるか。金属イオンを球形と仮定し、内包できる最大のイオン半径を、nm単位で求めよ。ただし、金属を内包してもフラーレン分子の大きさは変わらないものとする。
カ、フラーレン分子を直径D[nm]の球と見なして、フラーレンの結晶の密度d[g/cm^3]を求めよ。ただし、フラーレン分子の結晶格子において、各フラーレン分子は最も近いフラーレン分子と接しているものとする。解答には文字Dを用いてよい。