一日目



『俺の部屋に天使と悪魔と死神と幽霊がいる』
確かにそう聞こえた。しかし、聞き返さずにはいられない。
「何がいるんだって?」
『天使と、悪魔と、死神と、幽霊、――だ。俺が外から帰って自分の部屋を開けると……、いやがった。いったい何がどうなってやがるんだ?』
耳から電話を離し、液晶の画面をまじまじと見つめる。数秒の後に耳に戻すと
『どうにかしてくれ』
彼は助けを求めているようだった。偽りを述べている声には聞こえない。
「ところで、その4人のうち、いったい誰が何なのか、どうして分かったんだい? それらしい外見でもしていたのか?」
『いいや。いかにも、ってな外見をしてるのは幽霊だけだ。何といっても身体が半透明に透けているからな。そいつは幽霊で間違いないんだが、他の3人の格好は普通の人間と変わらん。でもな――とりあえず、その4人を仮にA,B,C,Dとしておくぞ――そいつらはこう言ったんだ。
 A「Bは悪魔ではない」
 B「Cは幽霊ですよ」
 C「Aは死神ではないのである」
 D「Cは天使なんだよ」
――それでな、どうやら、天使と悪魔は人間界の正邪のバランスを崩さないようにセットで存在しているらしい。つまり、片方が嘘をついたらもう片方は本当のことを言い、片方が本当のことを言ったらもう片方は嘘をつくみたいだ。そんなわけだから、4人のうち誰が天使で、誰が悪魔で、誰が死神で誰が幽霊なのか分かった、って訳だ』
「なるほどね。――それで? 僕はこれからキミの家に行けばいい、ってことになるのかい?」
『ありがてえ』
ほとんど涙ぐまんばかりの声だった。
――電話を切り、彼の家へと向かう。




(問) 天使、悪魔、死神、幽霊はそれぞれA,B,C,Dのうちの誰?