ラノベ部【読者への挑戦状的な】



「結局……。何も変わらないのか……」
藤田の嘆きが耳へと届く。
本当にどうにもできないのか。
彼のヒロインである前羽良さんを救って、理恵の記憶を回復させる。
そのためには、二回分の木の力が必要だというのに、今、木の力は一片もない。
誰もが、喋ることができなかった。
救えるのは、一人だけ。
しかもこの場合、一人を救ったら、佐崎が犠牲になる。
そんなことは到底、認められない。
だが、もう前羽良さんが限界に近い。それは決断の時がもう迫っているということ。
佐崎を見捨て、理恵も見捨て、前羽良さんを助けるか。
前羽良さんを見捨て、佐崎も見捨て、理恵を助けるか。
前羽良さんも理恵も見捨て、佐崎を助けるか。
どれだけの悲劇が訪れるとわかっていても、何かを選ばなければならない……。
だけど、本当に全員を救う方法は存在しないのか?
もう一度。
これが最後だ。
考えろ。
なんでもいい。
思い出せ。
なんでもいい。
思いつけ。
奇跡を起こす方程式を!
このまま、誰かを犠牲にして、誰かを不幸にしてたまるものか!






このように、1文ごとに改行して主人公の葛藤などをあらわす手法について。
昔は「クドいなぁ……」などと思いつつ、あまり良い感情を持っていなかったのですが、冷静に考えてみると、次のページをめくる前にこの状況を打破する手段を考えればいいんだなということを明示してくれるのは、とても有難いことだと思います。
いわゆる、「ここまでで推理に必要な情報はすべて明かされた。さあ読者諸兄よ、犯人を推理してみよ!」に相当する部分です。推理に必要な情報が出揃っていることが作者によって保証されているのが、最大のポイントです。
そう考えると、「毎文改行」というのも、出題ページと解答ページが別のページになるように調整、つまりは考えたい人が、誤って考える前に解答を読んでしまわないようにするための処置だと考えれば、筋が通ります。納得です。
さすがは先人が編み出した技法。理に適っています。




(注) 例文の出典は、すっげぇ理不尽にヒロインズが全復活したアレの続編。今作の逆転劇はわりとちゃんとしている。